不妊治療専門の加藤レディスクリニック(東京・新宿、加藤修院長)は、通常の排卵誘発剤で副作用が起きやすい
不妊症患者向けに新たな治療法を開発した。
乳がん治療薬 を応用して排卵を誘発する。実際に患者で試験したところ副作用は見られず、正常な排卵を促すことができ、約六割の患者は妊娠できたと言う。
成果は16日から熊本市で開催される日本不妊学会で発表する。
対象者は不妊症によくみられる「多のう胞性卵巣症候群」の患者で、一度に多数の小さな未成熟な卵子ができて
しまう。通常の排卵誘発剤を使えば多くの卵子が成熟するが、一方で卵巣が腫れやすくなり、腹水や胸水がたまるなど
「卵巣過剰刺激症候群」と呼ぶ副作用が現れやすい。血栓ができて死につながる場合もある。
同クリニックは乳がんの再発防止などに使う治療薬「レトロゾオール」に排卵を促す作用と関連があることに着目
した。乳がん治療では5年程度服用するが、今回の不妊治療は生理期間中に一週間だけ服用する。
54人の患者の承諾を得て試験したところ、卵巣が腫れるといった症状もなく、正常に排卵できた。
体外受精から作製した「凍結胚」を母体に戻すと約六割の人が妊娠した。
正常な排卵を促すため、患者によっては自然妊娠が可能になる場合もあった。
従来の排卵誘発法は費用が5万円ほどかかり、毎回通院して注射する必要もあった。新手法の費用は約5千円に
抑えられるとしており、どこでも飲める錠剤なので患者の費用負担軽減につながる。