子宝に恵まれない夫婦にとって、不妊治療は頼みの綱だ。晩婚化でニーズは高くなる一方だが、治療費は高く健康保険も使えない。経済的負担を理由に治療をやめる人もいる。新生児の65人に1人は体外受精で生まれているが、日本は不妊治療にまだ冷たい。
10組に1組は不妊カップルといわれ、治療を受けている人は47万人にのぼる。例えば卵子と精子を試験管内で授精させる体外受精で一回約40万円かかる。一回の治療で子供を授かることは少なく、妊娠するまで何度も挑戦する人が多い。早稲田大調査によると、不妊治療にかかる費用は年平均41万円。治療経験者の3割が費用が高いため治療を中断したり、回数を減らしたりしている。
2004年度から国と自治体とが折半して治療費の一部を助成する制度が始まった。年10万円を上限に最大で2年間という内容。
不妊症の夫婦や医師らは「支援が不十分」として、国に保険適用を強く求めてきた。助成期間が06年度から5年に延長になったが、保険適用はやはり実現しなかった。
ある民間調査によると、約9割の女性が不妊治療中、「頻繁な通院による精神的・肉体的な負担」など精神的な不安を抱えている。国内には600を超す不妊治療の施設があるが、心のケアまで面倒をみてくれるところはあまりなく、医療機関の間の実力差も大きいとされる。代理出産や卵子提供といった社会できちんと話し合わなければならないテーマも不妊治療には山積。
にもかかわらず「少子の今こそ議論を始めよう」という声はまだ小さい。